「ERPという言葉をよく聞くけれど、正直、何ができるものなのかよくわからない」そんな風に感じていませんか?
この記事では専門用語をなるべく使わずに、中学生でもわかるくらいのやさしさで、ERPとはなにかを「図で分かりやすく」説明します。
この記事を読むことで、
・ERPがどんな仕組みなのか
・自社に本当に必要なものなのか
判断できるようになります。
ERPとは「会社の情報を一箇所に集める箱」
ERPとは「Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」の略で、読み方は「イーアールピー」です。
日本語では「統合基幹業務システム」という少しむずかしい名前で呼ばれています。
でも、意味はとてもシンプルです。
ERPとは、会社の中にある「人・モノ・お金・情報」という大切な資源を、バラバラに管理せず一つの場所(データベース)にまとめて管理する仕組みのことです。
これまで多くの会社では、下のように部署ごとにバラバラの方法で管理していました。
・営業はExcel
・経理は会計ソフト
・在庫は別のシステム
その結果、同じ情報を何度も入力したり、数字が合わなかったりすることがよく起こります。
こうしたムダやミスを減らすために、情報を一つにまとめて管理できるERPを導入する会社が増えています。
一目でわかる比較表:「バラバラなシステム」vs「ERP」
従来のシステム運用とERPの違いを表にまとめました。
| 従来 | ERP | |
|---|---|---|
| データの管理方法 | 部署ごとにExcelやソフトでバラバラに管理 | 社内すべてのデータを一つのデータベースに集約 |
| 情報の整合性 | 手入力によるミスや、部署間で数字が合わないことがある | 常にデータが一致し、リアルタイムで自動更新される |
| 経営判断 | データを集計するまで時間がかかり、判断が遅れる | ボタン一つで最新の利益状況がわかり、すぐに判断できる |
以下ではERPの考え方を、身近な例を使ってわかりやすく説明していきます。
ERP(統合基幹業務システム)を学校に例えると?
学校でのことを想像してみてください。
クラスごとの担任の先生が、「今日休んだ人」と「休んだ理由」をそれぞれ自分のノートに記録していたとします。
このとき、校長先生が「今日、風邪で休んだ人は何人いるんだろう?」と思ったとき、どうなるでしょうか。
全クラスの先生に聞いて回り、集めた情報を自分で数えなければなりません。
これでは時間がかかりますし、数え間違いが起きてしまうかもしれません。
ERPはこうした情報をひとつにまとめる箱です。
先生たちが「休んだ人」と「その理由」をERPに入力すると、その情報はリアルタイムに共有されます。
校長先生は情報を集めることなく、ERPを見るだけで、風邪で休んだ生徒の人数をすぐに知ることができます。
最近風邪で休む人が増えているな、と早い段階で気付ければ、マスクの着用を促そう、とか、アルコール消毒を設置しようといった対策を、事前に打つことができます。
さらには、休んでいる人は女子が多いな、その理由はなぜだろう。といった考察ができるかもしれません。
ERPは従業員が入力したそのタイミングで、全員が同じ情報にアクセスできるようになります。そのため、ミスや漏れを減らすことができ、正しい情報をもとに状況を確認したり、分析をすることができるのです。
なぜ「経営資源計画(ERP)」と呼ばれるの?
ERPは「Enterprise Resource
Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)」の略です。日本語にすると「経営資源計画」ですが、これはもともと工場で材料を効率よく管理する方法「MRP(資材所要量計画)」から発展した言葉です。
その「ムダをなくして、効率よく使う考え方」を工場だけでなく、会社全体に広げたものがERPです。
人・お金・時間・情報といった、会社にとって大切なものを、どう使えば一番よいかを考えるためにこの名前がつけられました。
ERPを導入する3つの大きなメリット
ERPを導入することで、情報の行き違いや入力ミスといった、現場のストレスを減らすことができます。ここでは、3つの主要なメリットについて解説します。
1.「二重入力」は不要に!業務スピードと情報の正確性の向上
ERPの最大のメリットは、同じデータを何度も入力する手間がなくなることです。
これまでは営業が入力した受注情報を、経理が会計ソフトに再度打ち直すという「二重入力」が発生していました。
ERPでは、営業が入れた数字が自動的に会計システムや分析帳票へと引き継がれます。
この転記作業がなくなるだけで、入力ミスを減らし、業務スピードが格段に早まります。ミスの確認に追われていた時間を、より重要な業務に使えるようになります。
2.リアルタイムで会社の「今」を可視化し、判断のスピードアップ
従来の管理方法では、知りたい情報を得るまでに集計・計算をしなければならず、タイムラグが発生してしまいました。
ERPがあれば「今この瞬間」の数値として確認できるので、必要な情報にすぐにアクセスすることができます。そのため、「赤字になりそうだ」といった予兆にもいち早く気付くことができるのです。
3.「ズルや間違い」を防ぐ!社内ルールが自然に守られる仕組み
ERPにデータを集めると、会社の中の「風通し」が良くなります。
すべてのデータに「いつ・誰が・何をしたか」という記録(足跡)が残るため、こっそり数字を書き換えたり、ミスを隠したりすることができなくなるからです。
・デジタルな足跡:誰が操作したか一目でわかる
・ワークフロー:承認がないと次に進めない仕組み
「正しいルールを、みんなで自然に守れる環境」を作れることが、ERPを導入する大きな価値の1つです。 専門用語では「ガバナンス(健全な経営)」や「内部統制(正しいルール作り)」と言いますが、要は「みんなが正直に、そして安心して働ける仕組み」のこと。ERPはこの仕組みを自動的に作ってくれる、頼もしい存在なのです。
ERP導入前に知っておくべき3つのデメリット
ERPは大きな効果もありますが、良いことばかりではありません。 ここでは、導入してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないための注意点をお伝えします。
1. はじめにかかる費用と、使い続けるための費用が必要
ERPの導入には、購入時にたくさんの費用(初期費用)が必要になります。 数百万から数千万円もの大きな費用がかかることも珍しくありません。システムそのものを購入する費用だけでなく、自社の業務に合わせて設定する費用や、社員へのトレーニング費用が発生します。
また、使い始めた後も月額の利用料やサポート費用など(ランニングコスト)がかかり続けます。ただ「高い・安い」だけで決めるのではなく、それによって削減できる人件費や、売上が増えるなどのバランスで本当に価値があるのかを考えることが大切です。
2.これまでの業務フローを「システムに合わせる」ことの大変さ
ERP導入で最も大変なことは、これまでの「慣れ親しんだ仕事のやり方」を変えなければならないことです。
多くのERPは、その業界で最も効率的な仕事の進め方(ベストプラクティス)に基づいて設計されています。
そのため、会社ごとの特殊なやり方や古い慣習がある場合、「使いにくい」「前の方が良かった」と不満が出ることもあります。
仕事をシステムに合わせるのか、それともお金をかけてシステムの方を変更するのか、難しい選択をしなければなりません。
だからこそ、会社のトップが「なぜ変えるのか」をしっかりと説明し、現場をリードしていく必要があります。
3.定着までの教育コストとサポートが必要
ERPはできることがたくさんある便利なシステムです。その分、操作を覚えるまでには時間がかかります。
特にこれまでExcelや紙で業務を行っていた人にとっては、画面の項目が多く「難しい」と感じるかもしれません。
使い始めは操作の問い合わせが増え、一時的に業務効率が下がってしまう時期が必ずあります。 そのため、はじめから
・わかりやすいマニュアルを用意する
・社内勉強会を開く
といった準備が必要です。
パソコンやITが苦手な人を置いていかず、全員がERPを使えるようにための、サポート体制を整えることが必要です。
なぜERPを入れると「月の締め作業」が早まるのか?
ERPがあると、これまで10日かかっていた決算が5日くらいで終わるということもあります。 なぜそんなに早くなるのでしょうか?理由を解説します。
売り・買いや支払いなどの業務情報から「自動で仕訳」がつくられる
ERPの最大の武器は、日々の業務で発生したデータが、リアルタイムで「会計上の仕訳」に変換される点です。
例えば、営業が出張で使った新幹線の交通費を入力すると、その瞬間に「交通費としていくら使ったか」という記録が自動で作られます。
これまで経理の人があとからまとめて入力していた「交通費はいくら使ったか」という作業を、システムが自動で行ってくれるイメージです。
そのため、月末にまとめて大量のデータを入力する必要がなくなり、入力ミスをチェックする手間も省けます。結果として月末の締め作業を大幅に早めることができます。
お金が入ったかどうかを確認する「消込作業」の効率化
経理仕事で大変なのは、請求した金額がちゃんと銀行に入金されているかを確認する「入金消込」の作業です。
これを手作業で行う場合、銀行の通帳を見ながら、別のシステムやExcelと数字を比べる、という手間のかかる作業が必要です。
ERPでは、請求情報と入金情報が同じシステムの中にあるため、この請求にこの入金が対応しているという照合作業がスムーズにできます。
入金の漏れもリアルタイムで確認できるため、会社のお金の流れをよくすることにも繋がります。
監査対応がスムーズになる「数字の根拠(証跡)」の追いやすさ
ERPを使うと、「この売上の根拠は?」と聞かれたときも、すぐに答えられます。紙の資料を探したり、いくつものファイルを開く必要はありません。簡単にシステム上で数字のもとになった情報を探すことができるようになります。
数字がきちんと繋がって整理されているため、「この数字は合っているの?」と疑われにくくなり、監査の際も安心です。投資家や金融機関からも信頼されやすくなります。
ERPは大きく2種類。選び方は?
ERPには大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。
最近は多くの会社が「クラウド型」を選んでいますが、会社の大きさやセキュリティルールによって合うものは変わります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
「クラウド型(SaaS)」:安く・早く使えて、自動でアップデート
クラウド型ERPは、インターネットを通して、外部の会社が用意したシステムを使う方法です。この方法を「SaaS(サース)」と言ったりします。 自分の会社でサーバーを用意する必要がないため、初期費用を少なくできます。早ければ数週間から数ヶ月で使い始めることができるのが特徴です。
基本的に、法律が変わったり、消費税が変わったときにはシステムが自動的に新しくなります。 パソコンだけでなくスマホやタブレットからも使えるため、家や外出先からの確認や承認もできます。「安く、早く、手間なく」始めたい会社にとって、一番選ばれている方法です。
▶クラウドERPとは?導入メリット・デメリット、オンプレミスとの違いを解説「オンプレミス型」:会社独自のやり方に細かく合わせられる
オンプレミス型は、自社内や自社が契約している専用のサーバーを置いてシステムをつくる方法です。お金はかかりますが、会社ならではの特殊な業務フローに合わせて、細かく自由にシステムを作り変えられるのが強みです。
自社専用の環境で構築できるため、とても高いセキュリティを求める大企業などで選ばれています。 ただし、サーバーを買うお金や管理する人の手間も必要になります。 特別なルールが多く、一般的なシステムではどうしても合わない場合に選ばれる方法だと言えます。
中小企業には「クラウドERP」がオススメな理由
人手や時間が限られている中小企業には、「クラウドERP」が特にオススメです。
その理由は、次の3つです。
1. 初期費用の低さ
2. 専門のシステム担当者がいなくても使える
3. いつでも新しい機能を使える
ITに詳しい社員がいなくても、クラウド型なら運営会社がシステムを安定して動かしてくれます。また、最新のセキュリティ対策も任せられるため、自分たちで対策するより安全な場合も多いです。 スピード感が命の中小企業にとって、準備に時間をかけず、すぐ使い始められるクラウド型は心強い存在となります。
失敗しないために!ERPを選ぶときに大切な3つのポイント
ERPは一度入れると、あとから簡単に別のものに変えることができません。
もし選び間違えると、時間もお金もムダになってしまいます。
「機能がたくさんあるか」だけを見るのではなく、「自社で、本当に使い続けられるか」という目で選ぶことが大切です。
ここでは、必ずチェックしてほしい3つのポイントを紹介します。
1. 自分たちの業界のやり方に合っているか
ERPには、特定の業界向けにつくられた「テンプレート」を持つものがあります。大切なのは「自分たちの業界では当たり前のやり方」が、そのシステムで実現できるかです。
デモ画面を見たり、実際に触ったりして、普段の仕事の流れがそのまま再現できるかを確認しましょう。
同じ業界での導入実績が多いツールであればより安心です。
2. 現場の人が直感的に使えるか
どんなに機能が豊富なシステムでも、画面が見にくく入力しづらければ、現場で使われなくなってしまいます。
ERPを選ぶときには、管理職や経理の人だけで決めてはいけません。
実際にデータを入力する現場スタッフにも試してもらうことが大切です。
現場がストレスなく「楽になった」と感じられる操作性(UI/UX)が、システムを社内に定着させる近道です。
3. 会社が大きくなっても使い続けられるか
ERPは一度導入すると5年、10年と使い続けるものです。 今の会社の規模に合っているだけでは、足りなくなるかもしれません。
例えば、
・会社の従業員数が増えた
・新しい事業を始めた
そんなときにも無理なく使えるかを考えておきましょう。
また、法改正(インボイス制度や電子帳簿保存法など)のときに、すぐに安価に対応できるかどうかも大切なポイントです。
ERP導入でよくある失敗パターン
ERPの導入でつまずく会社は少なくありません。その原因は、システムの難しさよりも、「会社の進め方や考え方」にあります。 ここでは、失敗してしまう会社に共通するよくある間違いを紹介します。
現場を無視して決めてしまい、使われなくなる
経営陣が「デジタル化(DX)だ」、「可視化だ」と意気込んで、現場の意見を聞かずにERPを入れてしまうと、うまくいきません。
現場の人からすると「今までExcelでできていたのに、なぜ面倒なシステムを使わないといけないの?」と感じてしまいます。
システムは実際に使って「情報を入れる人」がいてこそ意味があります。
だからこそ、早い段階から現場の中心メンバーを巻き込み、「このシステムを使えば仕事が楽になる」「残業が減る」というメリットを分かりやすく伝えることが必要です。
ERPを「経営者のための管理ツール」ではなく「みんなの仕事を楽にするツール」としての共通の理解を作らなくてはいけません。
現場が主役にならないまま進めると、データが入力されなくなり、せっかくのシステムが使われないまま終わってしまいます。
導入しただけで満足してしまい、数字を活かせていない
システムが無事に動き始めたことで「導入は成功した」と安心してしまうケースはよくあります。
しかし、ERPは使い始めてからが本当のスタートです。大切なのは、集まったデータをどう活かすかです。
例えば、
どの数字を / 誰が / いつチェックして / 何を判断するのか
こうしたルールを決めておかないと、何も変わりません。
「いつもと違う数字が出たら、すぐに話し合う」
「数字を見て、次の行動を決める」
といった、データをもとに考える新しい習慣を作ることが必要です。
ERPは、入れることがゴールではなく、会社をよくするためのスタートなのです。
ERPに関するよくある質問(FAQ)
導入を検討する際によく寄せられる質問にお答えします。
会計ソフトだけではダメなのですか?
会計ソフトは「結果としての数字」を記録するもので、販売・購買といった「数字が生まれる前の流れ」までは管理できません。
部署ごとの情報の連携や、仕事全体の効率化や将来の予測を行いたい場合は、ERPが必要になります。
導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
クラウド型の一般的なERPであれば、3ヶ月から半年程度で使い始める会社が多いです。
ただし、自社独自の設定変更が多い場合や、過去のデータをたくさん移す必要がある場合は、1年以上かかることもあります。
期間を早めるコツは、最初から完璧を求めないことです。
「まずは最低限必要な機能」だけを使い始め、慣れてきたら少しずつ広げていく方が、失敗しにくく、現場も順応しやすくなります。
社員が数人しかいない会社でも、導入する意味はありますか?
はい、十分にあります。最近は、1人あたり月に数千円から使えるERPもあり、小さな会社でも始めやすくなっています。
人数が少ない会社ほど、一人でいくつもの仕事をしていることが多いため、ERPによる自動化の効果を強く感じやすいです。
早いうちから正確なデータの基盤を作っておくことは、会社が大きく成長するときの大きな助けになります。
まとめ:ERPは「会社の判断を早くする」ための大切な投資
ERPとは、社内のバラバラな情報を一つに繋げる仕組みです。「ヒト・モノ・カネ」といった会社の資源を効率的に使うための土台になります。
ERPの導入は、費用がかかる、仕事のやり方を変えることに戸惑う人が出る、など簡単ではありません。
それでも、そのハードルを乗り越えた先には、二重入力の手間がなくなり、月ごとの締め作業も早く終わるようになります。そしてなにより、「リアルタイムな経営判断」が可能になります。
大切なのは、「ERPを入れること」そのものではありません。
ERPを使って、会社の考え方や進め方をどう良くしていくか、ということです。
まずは今の業務フローを見直し、どこに「情報の分断」があるかを探すことから始めてみてはいかがでしょうか。
正確なデータに基づく経営が、これからの成長につながる大きな一歩になるはずです。




