工数管理とは、プロジェクトや業務における作業時間を把握する手法です。どの仕事にどのくらいの時間がかかっているのかを知ることで、利益率の高いプロジェクトや、逆に赤字になりそうなプロジェクトを発見することが可能です。
ツールを活用することで、作業の進捗状況を可視化し、効率的にプロジェクト管理を行うことができます。本記事ではエクセルでの管理方法も紹介します。
工数管理とは何か?
工数管理とは、特定の業務やプロジェクトにかかる時間を記録し、実際にかかった人件費を把握・管理することです。
工数管理を実施することで、どのプロジェクトにどれだけの人材や時間が投入されているかを明確にすることができ、プロジェクトの進捗が把握できます。そのためリソースの最適配置や、課題を発見することが可能になります。
工数管理を行う必要のある業種は、人件費を主な原価とするような、システム開発業やコンサルティング業、広告業、クリエイティブ業などが挙げられます。このような業種では生産性を上げることが会社の利益を上げることに直結します。
工数と勤務時間との違い
工数と勤務時間は似ていますが異なります。勤務時間は従業員がその日働いた総時間を指しますが、工数は特定のプロジェクトやタスクに投入された作業時間を示します。
例えば勤務時間が8時間でも、実際にプロジェクトにかかわった時間は6時間で2時間は別の作業をしていたという場合は、工数と勤務時間がイコールにはなりません。そのため、工数は勤務時間とは別に記録する必要があります。
ただし、別々に管理をすることで二重入力になるため、入力の手間が増えてしまいます。工数管理システムの中には、勤怠の機能を持ち、それらが情報連携されるものもあるので、必要に応じて検討しましょう。
工数管理の単位と計算方法
工数管理では、通常「人時」「人日」「人月」という単位が使用されます。「人時」は1人が1時間かけて完了できる作業量を示し、「人日」は1人が1日(8時間)で行う作業量を示します。「人月」は1人が1ヶ月(8時間×20日=160時間)に行う作業を表します。
例えば、たとえば、4 人で半日かかる作業ならば「2人日」となります。計算方法は以下です。
4人×(8÷2)時間=16時間=2人日(1日を8時間とした場合)
工数管理の目的
工数管理には以下のような目的があります。
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- コストを削減すること
- 各タスクやプロジェクトにどれだけの時間が費やされているかを把握することで、非効率な業務や不要な作業を見つけ、コスト削減につなげます。
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- リソースを最適配分すること
- チームや個人の作業負担を適切に配分し、過負荷やリソース不足を防ぎます。
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- 問題を早期発見すること
- リアルタイムにプロジェクトの進捗管理ができるため、遅延のリスクを早期に発見して対策を講じます。
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- 適切なプロジェクト計画を立案すること
- 過去の工数データを基に、より正確なスケジュールや予算の見積もりが可能になります。
会社にとっての目的
企業における工数管理の目的は、プロジェクトの利益を最適化することです。正確な工数の把握により、本来必要なリソースとコストを明確に算出できます。これによって、無駄なコストの排除や、利益を最大化するための戦略を検討できます。
また、従業員個々の稼働状況が見える化されるため、マネジメントや評価のための貴重なデータも得ることが可能になります。
現場での利点
工数管理を行うことで、自身の業務工数が明確になり、負荷がかかっている、作業が偏っているなどの状況に客観的に気が付きやすくなります。
どのような作業にどれほどの労力を要したかが視覚化されるため、適切に評価されやすくなります。
また、各タスクにかかる時間を記録することで、無駄な工程や改善が必要な部分が明確になるため、スケジュール管理がしやすくなるなどの利点があります。
工数管理のメリット
工数管理を導入することで得られるメリットは多岐に渡りますが、代表的なものは以下です。
生産性向上と可視化
工数管理を適切に行うことで、各プロジェクトにどれだけの時間が費やされているのか明確に把握できるようになります。
このデータをもとに、業務の進捗や成果を評価することが可能です。各タスクにかかる時間を「見える化」することで、ボトルネックや無駄な工程を特定でき、改善を試みることができます。業務改善が少しずつ進むことで、全体の生産性が向上します。
見積もりの精度向上
工数管理を通じて過去のデータを蓄積することにより、今後のプロジェクトでの見積もり精度が向上します。
具体的な作業時間の記録があれば、類似プロジェクトに対するリアルなデータを基に見積もりを行うことができ、コストや納期がより正確に予測できるようになるでしょう。
プロジェクト利益の把握
工数管理を導入することで、プロジェクトごとの利益を正確に把握できるようになります。受注金額から原価を引いた際の正確な数値を算出できます。この時、労務費やその他のコストが明確になるため、利益分析を行うことができます。
従業員がどれだけの時間を特定のプロジェクトに費やしたのかを記録することで、実際の人件費を明確に計算することができ、利益率の向上に役立ちます。早期に赤字を察知できるため、その後の戦略立案やプロジェクトの見直しが可能になります。
スケジュール調整に活用できる
各タスクにかかる時間を事前に把握できるため、適切なリソース配分やスケジュール設定が可能です。
たとえば、特定のプロジェクトでの進捗状況を把握することで、必要に応じて作業の優先順位を変更し、リソースを再配置することができます。
スケジュール調整が効果的に行なわれることで、納期遅れを防ぎ、クライアントとの信頼関係の強化につながるでしょう。
工数管理のツール
工数管理の方法は多岐にわたりますが、適切なツールを選ぶことで、より効率的な運用が可能になります。特に、中小企業においては、コストを抑えつつ機能性を兼ね備えたツールが求められます。
自社の予算や状況に合わせて適切なものを導入しましょう。
エクセルでの工数管理
エクセルは、工数管理において非常に使い勝手の良いツールの一つです。エクセルは多くの企業がすでに導入しているため、工数管理のために新たに購入する必要がなく、無料で始められます。
また、エクセルの機能を駆使することで、簡単にカスタマイズ可能な工数管理が実現できます。タスクやプロジェクトにかかる時間を手軽に記録し、後で集計することができるのが魅力です。
エクセルを用いた簡単な工数管理表の作成
エクセルを使用した工数管理表の作成方法を解説します。
まず、必要な項目を列として設定します。例えば、プロジェクト名、タスク名、担当者、開始日、終了日、予定工数などが挙げられます。さらにかかった時間を記入する実績工数欄を月の日数分作成します。月ごとにシートを分けるのがオススメです。
各プロジェクトやタスクごとに日々作業時間を記録します。これでその月のプロジェクトやタスクごとの工数が把握できます。
ピボットテーブルやエクセルの関数やグラフなどを使うことで、四半期ごとや部署ごとなど、組織や期間を指定した集計やグラフ表示も可能になり、視覚的にデータを把握できます。
エクセルの入力規則などの機能を用いて、入力にミスのないようにしましょう。
プロジェクトやチームごとの工数を比較したり、グラフ機能を利用して視覚的に成果を表示することで、チーム全体の意識を共有する助けにもなります。
ただしエクセルは複雑で大きいデータには向いていないというデメリットがあるため、ある程度規模が大きいデータを扱うのであればシステムを検討することをオススメします。
工数管理システムの導入
工数管理システムを導入することで、業務の効率化やデータの一元管理が可能となります。特に多くのプロジェクトを同時に進行させる企業にはシステムの導入が良いでしょう。クラウド型のシステムを選ぶことで、リモートワークにも対応でき、どこからでも進捗を確認できます。チームメンバー全員が同じ情報をリアルタイムで共有することが可能となり、円滑に業務が進みます。
直接原価計算は製品の製造に直接関連する費用だけを計算に含めるので、売上に連動して発生する原価をより正確に把握できるというメリットがあります。そのため、予算の策定、損益分岐点の計算など、様々な利益管理活動に活用できます。
しかし、直接原価計算はそのまま制度会計上では利用できないという問題点があるので注意が必要です。
クラウドERP「MA-EYES」
クラウドERP「MA-EYES」は、工数管理に強みを持つERPシステムです。プロジェクトの進捗状況や工数をリアルタイムで把握することができ、チーム全体の運営がスムーズになります。受注から納品に至るまでのプロセスを一元管理できるため、業務の効率化に寄与します。
効果的なデータ分析機能も備わっており、経営判断に役立つ情報を提供します。
また、MA-EYESでは様々な切り口で分析帳票を作成することができます。各部署単位や会社全体がどのような状況かを可視化することができます。
工数管理のステップ
工数管理を効果的に実施するためには、段階的に進めることが重要です。それぞれのステップを説明します。
STEP1 工数管理表の作成
各プロジェクトやタスクの工数を入力するための表です。
工数表には、プロジェクト名、担当者、作業内容、予定工数、実績工数、日報といった項目を盛り込むことが一般的です。これによって、業務ごとの進捗状況を把握しやすくなります。従業員が入力しやすいことが重要なので、自社のニーズに合わせたフォーマットを作成することが大切です。
エクセルでの作成方法は本記事「エクセルを用いた簡単な工数管理表の作成」にて説明していますので参考にしてください。
STEP2 実際の工数の入力
工数表が完成したら、実際の工数を入力する作業が始まります。このステップでは、各社員やプロジェクトチームが自らの作業時間を記録することが求められます。
入力内容には、実働時間や作業内容、作業開始・終了時刻などを含めることが一般的です。入力は定期的に行い、リアルタイムなデータを維持することが重要です。これにより、後でデータを集計し、具体的な分析を行う際に貴重な資料となります。正確な入力がなされることで、工数管理全体の精度が向上し、業務改善に役立つことが期待できます。
STEP3 データの集計と改善策の実施
実績に基づくデータが集まったら、次はそのデータを集計し、分析を行います。
集計データをもとに、各プロジェクトの進捗状況や工数の偏りを明らかにし、そこから見えてきた問題点について改善策を検討します。必要な変更を速やかに実施することで、業務の効率を高め、作業の無駄を省くことができます。また、定期的な見直しを行うことで、継続的な改善を図り、組織全体のパフォーマンス向上につなげることができるでしょう。
工数管理が難しい理由
工数管理はなぜ難しいのでしょうか。ERPベンダーである当社がよく聞くお悩みは、従業員が工数を入力してくれないという問題です。
日々忙しい中で具体的な作業時間を記録することは手間に感じられてしまい、定着するのが難しいのは事実です。
さらに、進捗が把握しづらいプロジェクトやタスクがあると、正確な工数管理が難しくなることもあります。特に、複数の業務が一度に進行する場合、各業務にかかる時間を正確に把握し、記録することは容易ではないことが、工数管理をより難しくしています。
工数を入力してもらう方法
まず、従業員が簡単に工数を記録できるシステムやツールの導入が考えられます。たとえば、スマートフォンアプリを利用してその場で記録できるようにすることで、工数の入力を促進できます。
また、勤怠管理と二重の管理になってしまうことで余計な負荷がかかってしまうため、勤怠と工数を同時に管理できると良いでしょう。
従業員へ工数管理を行う意味を理解してもらうことや、自身へのメリットを提示することも効果的です。
システム上で、工数登録を忘れるとアラートがでるような機能を持つシステムもありますが、アラートも毎月のように出てしまうと、だんだんと慣れてしまいアラートの意味をなさないことが往々にしてあります。 最終的には管理者のこまめなリマインドや指導などの対応によって少しずつ定着していくものです。
まとめ
工数管理とは作業時間を可視化し、コスト削減やリソース最適化を実現する手法です。
プロジェクトごとにかかっているコストが分かることで、プロジェクトの赤字を防いだり、効率化するための施策を検討することができます。
エクセルや工数管理の機能を持つシステムを活用して、プロジェクト利益を最大化しましょう。
本記事が貴社の工数管理に少しでもお役立ちいただけたら幸いです。