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原価計算とは?種類や計算方法・目的など基本をわかりやすく解説!|ビーブレイクシステムズ

原価計算とは?

原価計算は、製品やサービス提供に必要な原価を計算し、財務の基準として利用する方法です。原価とは、製造業であれば製造原価などと呼ばれ、商品をつくるのにかかる費用のことです。原価計算が必要なのは製造業だけではありません。

本記事では、企業運営における原価計算の必要性や目的についてわかりやすく解説します。具体的な計算手法から効率化の方法まで、詳細に説明していきますので、原価計算の基礎知識を身につけたい方や、既存の知識をさらに広げたい方にオススメの記事です。

売上の元となる費用を計算すること

売上を生み出す根幹は、提供された商品やサービスの価値です。この価値を数値で表し、事業の健全性を判断するのが原価計算です。製品やサービスの市場価格設定に必要な費用構成を原価計算によって理解する必要があります。

例えば、「パン」という製品を考えてみます。
パンを市場に提供するには、小麦粉やイースト、水などの直接原価と、それらを生産する機械の減価償却や工場の維持管理費などの間接原価を考慮する必要があります。原価要素を精密に計算し、製品価格に反映させることで、適正な利益を確保することができます。
パン一つでも、材料費や製造費用だけでなく、物流費用や販売促進費などさまざまなコストが関係しています。これらのコストを正確に把握し、製品価格に転嫁することが、企業の収益性向上につながります。

原価計算の目的と必要性について

原価計算は製品やサービスの生産にかかるコストを正確に把握し、それに基づき適正な価格設定を行います。
適切な原価計算によりコスト削減の方向性が見え、経費削減策を立てることが可能になります。

本章では、原価計算の目的と必要な理由に焦点を当て解説していきます。

財務諸表作成のため

原価計算を行う理由には「財務諸表」や「決算書」の作成が目的である場合があります。
原価計算では、製品やサービスの生産にかかる直接費用と間接費用を正しく分類し、財務諸表の基礎となるデータを算出します。計算される売上総利益は、経営の効率を示す重要な指標です。財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を正しく作成するためには、適切な原価計算が必要不可欠です。

価格設定のため

商品の価格設定はビジネスの成功に直結するためとても重要です。
製品やサービスを市場に投入する際に適切な価格であるかを把握するためには、正確な原価計算が必要となります。
商品の製造や提供にかかった実際のコストを正確に把握し、それに利益を上乗せして最終的な販売価格を決定するのが一般的です。

原価計算により、製品のコスト構造を明確にし、適正かつ競争力のある価格を設定することができます。材料費、労務費、経費といった、サービス提供にかかる必要なコストを全て細かく考慮します。

原価管理のため

原価計算を適切に行うことはコスト削減にも効果的です。原価計算を通じて企業がどのように資源を消費しているか明確にでき、製造過程や業務運営における無駄の特定と排除が可能となります。

原価の詳細な分析により企業は過剰な支出や非効率なコスト配分を発見し、それらを削減または再配分することで経営の効率化を図れます。

予算編成のため

予算編成は企業が経済的資源を効率良く利用し、財政の健全性を確保するために必要です。

原価計算で明らかにされる項目には、原材料費、人件費、経費など、将来にわたって発生する各種コストがあります。これらの情報を正確に把握することで、予算編成時に現実的な財務計画を立て、無駄な出費を削減し、資源配分の最適化を図ることができます。

将来のビジネス活動の費用と収益の見積もりを精密に行い、それに基づいて適切な予算を編成することで、企業は財務の安定性を保ち、戦略的な目標達成が可能となります。

経営計画のため

製品やサービスのコストを正確に把握することにより、最もコストがかかっているプロセスはどれか、効率が低いものは何かを特定できます。これにより、どの製品をどれだけ生産すべきかということや、サービス提供の範囲を調整することができます。

市場競争が激化する中で利益を最大化するためには、原価を詳細に分析し、生産プロセスやサービス提供方法の効率化を図ることが求められます。原価計算は経営計画の目的を達成するために、コストの見える化を実現し、戦略的な意思決定を支えます。

また、原価計算は特定の時点でのコストだけではなく、時間の経過に伴うコストの変動も捉えます。市場の変化、生産技術の進化、原材料の価格変動など外部環境の変化が企業のコスト構造に与える影響を理解することは、経営戦略を柔軟に調整し、企業の競争力を維持する上で不可欠です。

原価の分類について

この章では原価計算をするうえで、知識として知っておかなければならない費用の分類に焦点を当て説明します。原価計算で中心となる費用の定義やそれぞれの特徴について詳しく解説します。

材料費

材料費は製品製造に直接必要な物質や材料の費用です。
「パン」で例えると小麦粉やバターなどの材料だけでなく、パッケージの袋なども材料費となります。ここで注目したいのは、小麦粉やバターのような直接材料費が全体の原価計算においてどれだけ不可欠な位置を占めているかです。材料費は製品を作る基本的な要素であるため、これらのコストは製品の価格設定や収益に直結します。

安定した品質の材料を安価で確保することは、仕入れ先の選定や価格交渉のスキルが求められます。

労務費

企業における労務費は、製品やサービスを提供する過程で発生する従業員に支払う報酬の総額です。この費用には、直接生産活動に従事する従業員への給料のほか、残業手当や賞与といった追加報酬も含まれます。

労務費の効率的な管理を実現するには、まず正確な把握が必要です。その上で、必要な人員を適切に配置し、それぞれの生産性を最大化する労務管理の戦略を見直すことが、経営の効率化と生産性向上を実現します。

経費

経費は経営の効率化に欠かせない要素です。これは製造原価のうち、材料費と労務費以外の原価を指します。経費の例として、施設の維持管理費、設備の減価償却費、事務所の賃料、電力費・水道代、事務経費などが挙げられます。
経費は製品単位やサービス単位で直接計算しにくいことが多く、企業は全体の経費を生産高や販売高に基づいて按分して計算する必要があります。

経費の削減は利益の最大化に直結するため、無駄な経費が発生していないか定期的にチェックし、省エネルギー設備への投資や事務用品の購入管理の見直しなどコスト削減に繋がる施策を検討しましょう。

直接費/間接費

材料費、労務費、経費の3つは、それぞれ「直接費」と「間接費」に分けられます。順番に説明していきます。


「直接費」は、製品製造においてその製品に明確に帰属できる費用です。製品単位のコストを計算する際に直接製品に賦課されます。

  • 直接材料費(例:どの製品に使用したか明確に分かる材料費)
  • 直接労務費(例:製造に直接かかわる労働者の賃金)
  • 直接経費(例:特定の商品を作るために使った外注費)

「間接費」は、製品やサービスの製造・提供に間接的に関わる費用です。製品やサービス全体に比例して配分されます。

  • 間接材料費(例:燃料、消耗品)
  • 間接労務費(例:機械の修繕など製品の製造に直接かかわらない人の労務費)
  • 間接経費(例:工場の維持管理費、電気代)

正確な原価計算をするためには、直接費と間接費の適切な分類と計算が必須です。これらを会計基準に従って処理することで製品の原価を適正に把握し、経営戦略の策定に役立てられます。

変動費/固定費

続いて、「変動費」と「固定費」の基本について解説します。

「変動費」は生産量やサービス提供量が増加すると比例して増加する費用です。製品製造時の直接材料費や直接労務費などがこれにあたり、売上が増えればこれらの費用も一緒に上がります。

「固定費」は生産量やサービス提供量に関わらず、一定の範囲内で一定の費用がかかるものです。家賃や設備など、製造やサービス提供に必要な基本的な費用が含まれます。これらは売上の増減にかかわらず毎月一定の金額を支払う必要があります。

費用管理において基礎となる、変動費と固定費の違いをしっかりと理解し適切に活用することで、効率的なコスト管理を行うことができます。

原価計算の種類について

この章では主要な原価計算の種類と、それぞれの計算方法が各業種のニーズや目的にどのように適しているかを解説します。
これらの計算方法を理解することで、自社に合った方法で原価を算出し、より正しい数値で戦略を立てることが可能になります。

全部原価計算

全部原価計算とは、製造またはサービスを提供する上で生じる全原価を製品やサービスに賦課または配賦し、製品1個あたりの単価を計算する方法です。この計算には材料費や労務費などの変動費だけでなく、製品の製造に間接的に関わる固定費も原価として含めることが特徴です。

直接原価計算

直接原価計算とは、サービスや製品の製造に直接関わる材料費や労務費などの「変動費」を製品原価に含め、製品1個あたりにかかる基本的なコストを算出する方法です。固定費やリース料などの間接費は期間原価として処理されます。
全部原価計算では、固定費も含めすべて製品原価へ配賦するのに対し、直接原価計算では固定費を製品に配賦しないというのが大きな違いとなります。

直接原価計算は製品の製造に直接関連する費用だけを計算に含めるので、売上に連動して発生する原価をより正確に把握できるというメリットがあります。そのため、予算の策定、損益分岐点の計算など、様々な利益管理活動に活用できます。 しかし、直接原価計算はそのまま制度会計上では利用できないという問題点があるので注意が必要です。

標準原価計算

標準原価計算は、製品1個あたりの目標となる原価(標準原価)を定めます。あらかじめ決められた標準原価に基づいて仕掛品や完成品のコストを計算し、その標準原価と実際にかかった製造原価との差異を明確にします。
この差異分析を通じて製造プロセスや原材料のコスト効率を把握し、予算管理やコスト削減のための戦略立案に活用します。

標準値を利用するため、スピーディーであることが特徴です。ただし、標準原価計算は標準原価の決定を誤ると精度が低くなります。また、急激な市場の変動やコストの増加に迅速に対応が困難な場合があるため、定期的な標準原価の見直しや市場動向のモニタリングが不可欠です。

総合原価計算

総合原価計算とは、製品の製造過程にかかった費用を生産した量で割ることで1つあたりの単価を算出する方法です。
特に大量生産を行う企業に適した方法で、製品単位ではなく一定期間の総費用を基に原価を計算します。同じものを大量に生産する業種では、同一時期に多くの製品を製造するため個々の製品にかかる費用を個別に計算することが困難です。総合原価計算ではこの問題を解決するために、製造にかかる費用を生産量で割ることで、単位製品あたりの原価を計算します。
また、総合原価計算は、期末に完成品と仕掛品を分けて製造原価を按分し計算することが特徴です。

単純総合原価計算

総合原価計算の中でも単純総合原価計算とは、大量生産する製品がすべて同じものである場合に使用する計算方法です。単純に発生した製造費用の集計額を総生産量で割って算出します。

等級別総合原価計算

等級別総合原価計算は、同じ種類でも大きさなどが異なる製品を大量生産する場合に使用する計算方法です。例えば、同じパンでもサイズのみ変えて作っている場合などに用いられます。

組別総合原価計算

組別総合原価計算は、大量生産をしている工場で2種類以上の異なるものを製造している場合に使用します。例えばパン工場では、メロンパンや食パンなどを製造しているような場合です。

工程別総合原価計算

工程別総合原価計算は、大量生産をしている工場で2つ以上の工程がある場合に用います。工程ごとに原価を計算し、最終的な完成品の原価を算出します。例えばパンの場合、生地を作成するまでとパンを焼いた後で2つの工程が発生するような場合です。

個別原価計算

個別原価計算とは、受注ごとに原価を集計する原価計算方法です。製品やプロジェクトごとに、それぞれの製品にかかる費用を計算します。
個別受注生産などを行っている会社に適した計算方法で、1つ1つオーダーメイドで作成するクリエイティブな業種や工場などが該当します。

工場などでは、受注を受けた会社が製造指図書というものを作成します。製造指図書とは、何をいつまでにどこでいくつ作成するのか、といった製造に必要な情報がかかれている手順書です。
この製造指図書ごとに原価計算をします。

この計算方法の最大の特徴は、製品別に利益を計算できることです。これにより、どの製品が企業にとって利益をもたらしているか、または損失を招いているかを把握できます。今後同じような案件が発生した際の参考にもなるでしょう。

原価計算のフロー

原価計算は、費目別原価計算、部門別原価計算、製品別原価計算という3つのステップで行うことが多いです。各ステップについて説明します。

STEP1 費目別原価計算

費目別原価計算は、原価計算の最初に行う計算です。製品の製造にかかる費用を材料費、労務費、経費の3つの主要な費目に分け、さらにそれらを間接費と直接費に分類します。

STEP2 部門別原価計算

続いて、STEP1で算出した間接費を部門別に配賦していきます。配賦の基準は、人員数に応じて配分したり、占有面積比などを利用したり、適切な基準を設定します。

STEP3 製品・プロジェクト別原価計算

STEP1の費目別原価計算で算出した直接費と、STEP2の部門別に配賦した間接費を合計して、1製品およびプロジェクトにかかった原価を計算します。

原価計算と消費税について

原価計算における、消費税の取り扱いは税込経理方式と税抜経理方式の2種類があります。税込経理方式では、消費税を含めて原価計算し、税抜経理方式では含めずに計算します。 これはそれぞれの企業がどちらを採用しているかで決まります。

原価計算を効率化する方法

原価計算の効率は業務の品質に大きく影響します。この章では、原価計算のプロセスを効率化し、迅速かつ正確な経営判断を支援する方法を提案します。

原価計算システムの導入

原価計算システムは、原材料の消費量、人件費、間接経費など、企業の複数の原価要素を効率的に一元管理します。導入することで、従来手作業や複雑な表計算ソフトを使って行っていた作業が自動化され、時間と労力を削減できます。また、システムの導入により、データの正確性が向上し、ミスも大幅に減少します。
特にリアルタイムでのデータ分析機能は経営判断の迅速化に貢献します。

近年、クラウド型の比較的安価なシステムも増えているため、導入しやすくなっています。

税理士に相談する

システム導入のほか、税理士へ相談することもオススメです。税理士の会計に関する知識と税法や経営戦略に関する理解は、原価計算だけでなく企業経営全体の見直しにも大きく貢献します。

税理士は一般的な原価計算の方法指導だけでなく、会社の特定の状況に応じた税務上の最適なアプローチを提案してもらえるでしょう。
さらに、税理士は財務戦略全体の最適化に関するアドバイスをもらえる可能性もあります。原価計算の効率化だけでなく、長期的な経営戦略にも貢献する提案を受けることが可能です。

税理士と連携することで原価計算の効率化、税務効率化、財務戦略の最適化に貢献します。原価計算の問題を解消し、経営全体の改善につなげることができます。

工数管理ツールの活用

IT業界のようにプロジェクトごとにコスト管理を行う場合、正確かつ効率的な原価計算が求められます。そこで重要となるのが工数管理ツールの活用です。

原価計算の基礎となる正確な工数データは、精密な原価計算を実現します。プロジェクトの費用対効果を評価し、将来のプロジェクト計画でのより良い予算配分や資源配分の判断材料となります。結果的に、経営資源の最適化に寄与し、企業全体の収益性の向上につながります。

工数管理ツールを活用することで、実際にかかった時間(実工数)とプロジェクト計画時に予測した時間(予定工数)の差を正確に捉えることができます。工数管理ツールはレポート機能やダッシュボードを備えているものもあり、プロジェクトや部門、企業全体の効率化のための分析を容易に行えます。自動で集計分析を行うためミスの削減や時間の節約に大きく寄与します。
データ分析を通じて、業務プロセスのボトルネックを特定し、改善策を講じることができます。

また、工数管理ツールはプロジェクトの進捗状況をリアルタイムで追跡し、予算オーバーを早期に発見することができます。すぐに対策を打てるため、経営上のリスク管理にも効果的です。さらに、プロジェクトやタスクごとの詳細なデータを蓄積できるため、将来の見積や予算策定に活かせます。

原価計算の効率化は企業の収益性向上に直結するため、工数管理ツールを最大限に活用し的確な原価管理を行うことが推奨されます。

まとめ

原価計算は、企業の製造過程やサービス提供にかかるコストを正確に計算し、それを基に製品やサービスの価格設定を適正に行う重要なプロセスです。会社経営において、原価計算は収益性を最大化するだけでなく、財務状況を正確に把握し、効果的な経営戦略を立てる上でも不可欠です。具体的には、製品に対する直接費用の賦課だけでなく、間接費用の適切な配賦により、各製品の実際のコストを明確にすることが求められます。
原価計算では、固定原価と変動原価の区別を理解し、それぞれの特性に基づいてコスト管理を行うことが大切です。

本記事では、原価計算の種類や計算方法、そして効率化手法まで幅広く解説しました。ぜひ、自社の原価計算に役立てていただければと思います。

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